遺言と遺言執行の基本を解説!知っておくべきポイントと流れ

遺言や遺言執行について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。遺言は、自身の財産をどのように分配するかを事前に決めておくための重要な手段です。また、遺言執行は、その遺言を確実に実行するためのプロセスです。この記事では、遺言と遺言執行の基本をわかりやすく解説していきます。
遺言とは?その重要性と作成のポイント
遺言の基本的な役割と必要性
遺言とは、自身が亡くなった後に残された財産を誰にどのように分配するかを指定するための文書です。遺言がない場合、法律で定められた相続人が自動的に財産を引き継ぐことになりますが、これでは自身の希望通りに財産を分配できない可能性があります。遺言を作成することで、自身の意思を明確にし、相続トラブルを防ぐことができます。
遺言を作成するメリットとは?
- 自身の希望通りに財産を分配できる
遺言がない場合は法定相続分に従うことになりますが、遺言を作成すれば、特定の相続人に多めに財産を与えたり、法定相続人以外の人に遺産を残したりすることも可能です。 - 相続人間のトラブルを未然に防げる
財産分配の方針があらかじめ定まっているため、相続人同士の争いが起きにくくなります。 - 法定相続人以外の人にも財産を残せる
親族以外でも、生前お世話になった方や特定の団体などに遺贈することができる点も遺言のメリットです。
遺言書の種類と作成方法
- 自筆証書遺言
自分で手書きで作成する遺言書。費用はかかりませんが、形式不備で無効になるリスクがあります。最近は「自筆証書遺言保管制度」が始まり、法務局での保管が可能になりました。 - 公正証書遺言
公証役場で作成する遺言書。公証人が関与するため、無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されます。費用や証人の手配が必要ですが、信頼性の高さから利用者が多い方式です。 - 秘密証書遺言
内容を秘密にしたまま公証人に遺言書の存在を証明してもらう方法。ただし、形式不備があったとしても公証人が指摘しないため、後から無効となるリスクも否定できません。
遺言作成時に注意すべきポイント
- 形式を守る:特に自筆証書遺言は、厳格な様式主義が採用されているため、法に定められた要件(日付や署名など)に不備があると無効になることがありますので、注意が必要です。
- 内容を明確にする:誰に何を相続させるかを具体的に記載しましょう。
- 定期的に見直す:家族構成や財産状況が変わった場合、遺言内容を見直すことが重要です。
遺言と「遺留分」の関係
遺留分とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、法律上、一定の相続人に保障された最低限の取り分を指します。例えば、遺言によって「全財産を特定の子に渡す」と記載されていても、法律上の遺留分が侵害される場合、他の相続人が遺留分を請求することで、その最低限の取り分を取り戻すことが可能です。
遺言で注意すべきポイント
遺言で自由に財産を分配するとしても、遺留分を無視した内容にすると、後から遺留分を請求される可能性があります。請求が認められると、もともとの遺言内容から修正し、遺留分相当額を侵害された相続人へ渡さなければなりません。
- トラブルを防ぐには?
遺言を書く際には、遺留分を考慮しながら配分を決めることが望ましいです。どうしても遺留分を超えて特定の相続人に多く遺産を残したい場合は、生前にその旨を他の相続人と話し合い、納得を得ておくことがトラブル回避につながります。 - 専門家のサポート
遺留分を含めた相続の問題は法律的に複雑な側面があるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、遺産総額や相続人の構成を踏まえたうえで、最適な遺言書の作成を進めるのがおすすめです。
遺言執行の流れと執行者の役割
遺言執行とは?その目的と重要性
遺言執行とは、遺言書に記載された内容を実際に実行するプロセスです。遺言執行者が選任され、相続財産の分配や名義変更などの手続きを行います。遺言執行者がいない場合、遺言の内容がスムーズに実行されない可能性があります。
遺言執行者の選任方法と役割
遺言執行者は、遺言書の中で指定することができます。指定がない場合は、家庭裁判所で選任されます。遺言執行者の主な役割は以下の通りです:
- 相続財産の調査と管理
- 遺言書に従った財産の分配
- 不動産や預貯金の名義変更手続き
なお、遺言執行者を専門家(弁護士・司法書士など)とするケースは、複雑な財産構成や相続人間のトラブルを防ぐうえで有効です。
遺言執行の具体的な流れ
- 遺言書の検認:家庭裁判所で遺言書の内容を確認します(公正証書遺言を除く)。
- 遺言執行者の選任:遺言書に指定がない場合は、家庭裁判所で選任します。
- 財産の調査と分配:遺言執行者が財産を調査し、遺言書に従って分配します。
- 名義変更手続き:不動産や預貯金の名義変更を行います。
遺言執行にかかる費用と期間
- 費用:遺言執行者の報酬、各種手数料などが発生します。報酬は相続財産の規模や内容、作業の難易度によって異なるため、事前に費用を確認する必要があります。
- 期間:数ヶ月から1年程度かかることもありますが、遺言執行者がいることで手続きがスムーズに進む傾向があります。
遺言と遺言執行に関するよくある質問
遺言がない場合、相続はどうなる?
遺言がない場合、法定相続人が法律で定められた割合で財産を相続します。ただし、これにより相続人間でトラブルが生じることも少なくありません。特に、思わぬ相続人が現れたり、分配方法に納得がいかなかったりすると、話し合いが長引く原因になります。
遺言執行者は誰がなるべき?
遺言執行者は、信頼できる第三者(弁護士や司法書士など)が適任です。家族間でのトラブルを防ぐためにも、法律の専門家を選ぶことが望ましいです。また、相続人の一人を遺言執行者にする場合には、他の相続人との間で利害が対立しないかを十分に検討しましょう。
遺言執行に関するトラブルを防ぐには?
- 遺言書の内容を明確にする
- 遺言執行者を事前に指定する
- 専門家に相談して遺言を作成する
まとめ:遺言・遺言執行・遺留分の基本を理解し、円滑な相続を目指そう
遺言と遺言執行は、自身の意思を反映し、相続トラブルを防ぐための重要なプロセスです。しかし、遺言を書くうえでは遺留分の問題にも注意しなければなりません。遺留分を無視した遺言内容は、後から請求が行われ、結局修正を迫られる可能性があります。
そのため、遺言を作成する際は、形式や内容だけでなく、遺留分を含めた相続のルールをきちんと理解することが大切です。必要に応じて専門家の助けを借り、円滑な相続を実現できるよう、早めの準備を心がけましょう。
「遺言や遺言執行についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽に当事務所(法律事務所DeRTA(デルタ))にご相談ください。