任意後見・見守り契約の基礎知識|高齢者が安心を得るための最初の一歩

日本では、少子高齢化が進み、高齢者の方やそのご家族が「将来、認知症になった場合の財産管理はどうするのか」「一人暮らしのままでも十分にサポートを受けられるのか」といった不安を抱えるケースが増えています。
このような不安を解消するための制度・契約として、任意後見と見守り契約が注目されています。これらを上手に活用すれば、日常生活の見守りから財産管理まで、必要に応じたサポートを受けることが可能です。
本記事では、法律の専門家(弁護士)の視点から、任意後見契約における見守り契約の背景やメリットを中心に、任意後見制度・財産管理契約との関連性や違いをわかりやすく解説します。「自分の意思や財産を守る仕組みを早めに整えておきたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
見守り契約とは?任意後見制度と併用するメリット
見守り契約とは?
見守り契約は、認知症による任意後見が始まるまでの間、委託を受けた者(弁護士などの専門家)が定期的に本人と電話連絡を取り、または本人の自宅を訪問して面談することにより、本人の健康状態や生活状況を確認する契約です。原則として、任意後見契約とセットで締結しますので、これにより任意後見をスタートさせる時期を判断することもできます。
見守り契約が必要とされる背景と目的
少子高齢化が進む日本では、一人暮らしの高齢者や高齢夫婦のみの世帯が増えています。ご家族が遠方に住んでいるなどの事情により、体調面や生活状況を定期的に見守ることが難しい方も少なくありません。
そのような状況で、高齢者の生活を支えるために設けられた契約が「見守り契約」です。定期的な電話や訪問を通じて、健康状態や生活上の困りごとを把握し、必要があれば医療機関の受診や適切な福祉サービスにつないでいくことが可能です。近年では弁護士による法律相談が可能なサービスも登場しております(当事務所では「弁護士見守りプラス」というサービスを提供しております。これにより紛争を未然に防ぐことができます。)。
孤立を防ぎ、安心感を得られる点が大きなメリットといえます。
任意後見との違い・併用で得られる安心感
上記のとおり、見守り契約は任意後見契約とセットで契約することがほとんどです。
任意後見制度は、将来的に認知症などで判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ信頼できる方(弁護士や親族など)を後見人候補に選んで契約を結んでおく仕組みです。判断能力が実際に低下した際には、家庭裁判所の選任手続きを経て正式に「任意後見人」が就任し、財産管理や身上監護(施設入所の手続きなど)を行います。
このように、任意後見制度はあくまで判断能力が低下した場合に発動するものなので、それまでの期間の対応が問題となります。
そこで活用すべきなのが見守り契約です。
任意後見と見守り契約を併用すると、下記のように切れ目のないサポート体制を築ける点が魅力です。
- 判断能力がある場合:見守り契約により、まだ元気で生活できる状態でも、定期的な連絡や訪問で困りごとを早期に発見。
- 判断能力が低下した場合:任意後見契約により、後見人候補が正式な任意後見人となり、財産管理や身上監護を行う。
こうした併用により、適切なタイミングで必要な支援へ移行できるため、高齢者本人だけでなくご家族の負担も軽減されます。
見守り契約の手続きと注意点を徹底解説
見守り契約にかかる費用とチェックすべき項目
弁護士や行政書士、社会福祉法人、NPO団体など、見守り契約を取り扱う主体は複数あります。費用や契約内容は契約先によって異なるため、以下のポイントを確認してから契約を結ぶことをおすすめします。
- サービス範囲・頻度
- どの程度の頻度で訪問・連絡を行うのか
- 通院や買い物、施設同行などをサポートしてくれるか
- 費用体系・支払い方法
- 月額制か、利用回数による従量制か(数千円から数万円程度まで幅が広いです。)
- 公正証書化などの費用は別途かかるのか
- 契約書の内容確認
- 契約期間・更新時期・解約方法
- 緊急時の連絡体制や対処方法
- 情報共有のルール
- 家族や関係機関との情報共有についての同意事項
複数の事業者を比較検討することで、自分のニーズに合った内容と費用設定を見極めやすくなります。契約書の文言などで疑問点があれば、遠慮なく事業者や専門家に質問しましょう。
財産管理契約との違いについて
財産管理契約も、見守り契約のように本人がまだ判断能力を有している段階で、弁護士などの専門家に銀行口座の入出金管理や公共料金の支払い、不動産の管理などを専門家に委任する契約です。
見守り契約では財産管理は含まれませんので、この点は注意が必要です。
これらを状況に合わせてうまく組み合わせることで、財産・生活両面のサポートを受けながら、自分の意思を反映した老後の生活設計が可能となります。
まとめ:任意後見・見守り契約により将来の不安を軽減する
任意後見や見守り契約は、高齢になっても自分らしく生活を続けるための有効な手段ですが、判断能力がしっかりしている今のうちに検討を始めることが肝心です。認知症が進んでしまった後では、本人の意思を正確に汲んだ契約や制度運用が難しくなるケースも多いからです。
- 自分と家族のライフスタイルを考慮し、必要なサポートを洗い出す
- 費用や契約内容を比較検討し、自分に合った契約先・制度を選ぶ
- 弁護士や行政書士などの専門家に相談しながら、契約や制度の利用をスムーズに進める
高齢化社会では、人生100年時代といわれるほど長く生きることが当たり前になりつつあります。その中で、安心して老後を過ごすためには早めの準備が不可欠です。
もし「任意後見や見守り契約について、もっと詳しく知りたい」「自分の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けたい」と感じられましたら、ぜひ当法律事務所へお気軽にご相談ください。
弁護士としての専門知識と経験を活かし、お一人おひとりのご事情に合わせた最適な制度利用のプランをご提案いたします。費用に関するご相談や、お悩みのご説明のみでも構いません。まずはお問い合わせいただき、将来に向けた安心の第一歩を一緒に踏み出しましょう。