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任意後見契約に伴う財産管理契約とは?その重要性と具体的な活用方法を解説

derta_kouken

任意後見契約を結ぶ際、財産管理契約を同時に結ぶことがあります。これは、本人の判断能力が低下した場合に備えて、財産の管理や運用を委任する契約です。高齢化社会が進む中、認知症や病気による判断能力の低下に備える手段として、財産管理契約は注目を集めています。本記事では、任意後見契約に伴う財産管理契約の重要性や具体的な内容、活用方法について詳しく解説します。将来の安心を確保するためにも、ぜひ参考にしてください。

財産管理契約とは?任意後見制度と併用するメリット

財産管理契約とは?

財産管理契約とは、基本的には認知症による任意後見が始まるまでの間、本人が選んだ人(弁護士などの専門家)に管理や日常的な支払い手続きなどを委任する契約です。具体的には、預貯金の引出し・振込み、不動産の管理・処分、有価証券の管理・運用、生活費の支払い方法の指定などを指定して管理を任せます。任意後見と組み合わせることで、日常の財産管理から将来的な後見までを一貫してカバーでき、老後の不安を総合的に解消する仕組みを作ることができます。

任意後見契約と財産管理契約の関係

任意後見契約は、本人の判断能力が低下した場合に備えて、後見人に財産管理や生活面でのサポートを委任する契約です。一方、財産管理契約は、任意後見契約が開始するまでの間(認知症などにより判断能力が不十分となるまでの間)、財産の管理や運用を委託する契約です。

  • 財産管理契約の目的
    本人の財産を適切に管理し、生活費の支払いや資産運用を行うことです。
    例えば、不動産の管理や投資信託の運用、定期的な生活費の支払いなどが含まれます。
    財産管理契約は、本人が元気なうちから財産の管理を委任することで、将来の不安を軽減する役割を果たします。
  • 任意後見契約との違い
    任意後見契約とは時期が異なります。すなわち、任意後見契約は判断能力が低下した後に発効しますが、財産管理契約はそれまでの間の財産を管理することになります。財産管理契約から任意後見契約に移行するイメージです。
    財産管理契約により、判断能力が低下する前から財産管理を委任し、自身の労務等を軽減させることができます。例えば、高齢者が元気なうちに信頼できる家族や専門家に財産管理を任せ、自分自身は生活に集中することができます。
  • 見守り契約との違い
    見守り契約は、任意後見契約が発効するまでの間の契約であることは財産管理契約と同じですが、基本的には定期的に本人の状況を確認するのみで財産の管理行為は行いません。

財産管理契約の具体的な内容

財産管理契約では、以下のような内容を具体的に定めることが一般的です。

  1. 財産の範囲
    管理対象となる財産を明確にします。例えば、預貯金、不動産、有価証券などが該当します。
    特に、不動産の管理や賃貸収入の処理、投資信託の運用など、複雑な財産管理が必要な場合に有効です。
  2. 管理方法
    財産の管理方法を具体的に定めます。例えば、不動産の賃貸管理や、投資信託の運用方針などが含まれます。
    また、定期的な財産の評価や、必要に応じた資産の売却についても記載することができます。
  3. 生活費の支払い
    本人の生活費や医療費の支払い方法を定めます。定期的な支払いや、緊急時の対応についても記載します。
    例えば、毎月の生活費を指定口座に振り込むことや、医療費の支払い方法を具体的に定めることができます。
  4. 報告義務
    受託者が定期的に財産の管理状況を報告する義務を定めます。これにより、透明性が確保されます。
    報告の頻度や方法(書面や面談など)を具体的に定めることで、本人や家族が安心して財産管理を任せることができます。

財産管理契約の手続きと注意点を解説

財産管理契約のメリットとデメリット

メリット

  1. 財産の適切な管理が可能
    専門家や信頼できる人物に財産管理を委任することで、財産の適切な管理が可能です。
    特に、不動産や投資信託など、複雑な財産管理が必要な場合に有効です。
  2. 本人の負担軽減
    財産管理の負担から解放され、本人は生活に集中することができます。
    例えば、高齢者が財産管理のストレスから解放され、健康的な生活を送ることができます。
  3. 将来の備えができる
    判断能力が低下する前から財産管理を委任することで、将来の備えができます。
    これにより、本人や家族が安心して将来を迎えることができます。

デメリット

  1. 費用がかかる
    後見人に専門家を選任する場合、その報酬が発生します。
    また、公正証書の作成費用や、任意後見監督人の報酬も考慮する必要があります。
  2. 後見人の信頼性が重要
    後見人に選んだ人物が適切に職務を果たすかどうかが重要です。
    後見人が不正を行うリスクもゼロではないため、信頼できる人物を選ぶことが不可欠です。
  3. 契約内容の複雑さ
    財産管理契約は内容が複雑な場合があり、専門家のサポートが必要です。
    特に、財産の範囲や管理方法を具体的に定めるためには、専門家の助言が役立ちます。

財産管理契約の具体的な流れ

  1. 契約の準備
    本人と後見人候補者が話し合い、契約内容を決定します。
    財産管理や生活面でのサポート範囲を具体的に定めます。
  2. 公正証書の作成
    公証役場で公正証書を作成します。法律上は必ずしも作成する必要はありませんが、金融機関その他の手続の関係上、作成した方がよいとされています。
  3. 契約の発効
    財産管理契約は、即時発効することも可能です。これにより、判断能力が低下する前から財産管理を委任することができます。
  4. 財産の管理開始
    後見人が契約に基づいて財産の管理を開始します。定期的な報告や、生活費の支払いなどを行います。

財産管理契約を活用する際のポイント

  1. 後見人候補者の選定
    信頼できる人物や専門家を選ぶことが重要です。後見人には、財産管理や運用に関する知識と経験が求められます。
  2. 契約内容の明確化
    財産の範囲や管理方法を具体的に定めましょう。特に、生活費の支払い方法や報告義務について明確にすることが重要です。
  3. 費用の確認
    公証役場の手数料や後見人の報酬を事前に確認しておきましょう。専門家を後見人に選任する場合、その報酬も考慮する必要があります。

まとめ: 財産管理契約で将来の安心を確保

任意後見契約に伴う財産管理契約は、将来の判断能力の低下に備えるための有効な手段です。本人の意思を尊重し、安心した生活を送るための準備として、早めに検討することが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った契約を結びましょう。

もし「任意後見や財産管理契約について、もっと詳しく知りたい」「自分の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けたい」と感じられましたら、ぜひ当法律事務所へお気軽にご相談ください。
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弁護士 黒澤真志
弁護士 黒澤真志
代表
2009年12月に弁護士登録(登録番号41044)し、アクト法律事務所にて勤務した後に2019年4月に独立し、法律事務所DeRTA(デルタ)を設立。 家族関係の法律問題に関する交渉事件から訴訟事件までを数多く取り扱っており、東京地方裁判所の破産管財人や東京簡易裁判所の司法委員も担当している。 著書に、「離婚・離縁事件実務マニュアル」(第3版)(ぎょうせい)共著、「遺産分割実務マニュアル」(第3版)(ぎょうせい)共著、「新破産実務マニュアル」(全訂版)(ぎょうせい)共著、「遺言書・遺産分割協議書等条項例集」(新日本法規)共著など。
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